2024年8月の木村病院 院内広報誌【けいめいだよりNo.97】をお届けします。
【けいめいだより】今月のコラム
手術で治る認知症について
いわゆる認知症の症状をきたしていても外科手術で治る病気があり、これを「手術で治る認知症」と言います。
慢性硬膜下血腫
このうち最も多いものは、「慢性硬膜下血腫」という病気で、外傷のあとで脳の表面に血液が溜まってくる病気です。軽度の頭部外傷、たとえば尻餅をついた後、早くて3週間、遅くて3ヶ月してから脳の表面に液状の血液が徐々に溜まって来て、ごく軽度の麻痺が生じて歩けなくなったり、認知機能が低下してきたりします。
お酒をたくさん飲む人に多く、本人は転んだことを覚えていない場合が多いので、家族からすると、急に認知症になり歩けなくなった様に見えます。脳出血や脳梗塞などの場合には症状の進行がもっと急速です。
診断にはCT(コンピューター断層撮影装置)を行う事で簡単に診断がつきます。
手術も局所麻酔で頭蓋骨に小さな穴を開けて脳表に溜まっている血液を洗い流す事で1時間ほどで行う事ができ、1週間ほどの入院で退院できる事が多いです。
正常圧水頭症
次に多い病気としては「正常圧水頭症」があります。これは頭の中(脳の中)に水が溜まってくるという病気です。
もともと、頭蓋骨の中には「脳脊髄液」という無色透明な水が入っており、脳はその水の中に浮かんでいるのです。この水は血液から作られており、常に少しずつ新しい水に入れ替わっています。1日で3回入れ替わると言われています。
この水の吸収が悪くなり、一方で水を作る方はそのまま作り続けるので、その結果頭蓋骨の中に水が溜まってきた結果、脳の中に水が溜まってくるのです。症状としては、認知機能の低下、歩行障害、尿失禁、この3つがあります。症状の進行は比較的ゆっくりで、おそらくは月単位で徐々に進行して行くと思われます。
診断方法としては、頭部CTやMRIを行なって脳の中に水が溜まっていることを見つけることが第一歩となりますが、それだけでは不十分です。加齢に伴って脳が萎縮した画像と、脳の中に水が溜まった画像は非常に似ており、区別がつきにくいからです。
これを区別するためにはタップテストという検査を行う必要があります。これは、背中から針を刺して「脳脊髄液」を50mlほど抜いて、その後に認知機能低下、歩行障害、尿失禁といった症状が改善するかどうかを調べるのです。
これで、症状が改善するようであれば、「正常圧水頭症」と診断され、「シャント手術」を行う事になります。「シャント手術」とは、頭蓋骨の内部からお腹の中までシリコンの管を埋め込んで頭蓋骨の中に溜まった余分の水をお腹の中に流すという手術、あるいは、腰の脊髄の周囲の脳脊髄液をお腹の中まで流すためにチューブを体内に埋め込む手術です。
脳神経外科の手術の中では比較的簡単な手術で、手術後は普通の生活を行うことができます。この他にも、脳腫瘍でも認知症の様な症状を生じる事がありますが、頻度としては少ないと思われます。
認知症と思われても、比較的簡単な手術で治る病気が隠れていることもありますので、まずは脳神経内科や脳神経外科などを受診してこの様な病気が無いかどうかを調べてもらうことが必要です。
また、結果的に認知症と診断されても、どの様なタイプの認知症であるかを調べることが必要です。認知症の治療薬は認知症の種類によって異なるからです。
今月の栄養科だより
夏バテ対処法
かつて、夏バテといえば暑さで体力を消耗し、食欲が落ちてグッタリする状態を言いました。
でも、いまどきの夏バテは同じグッタリでも、その原因は昔のものとは違うことが。しかも、人によって原因は様々。自分がどうして夏バテしているかを知らないと、まちがった対策でさらに体調を崩してしまうこともあります。現代ならではの夏バテについて知り、しっかり対応しましょう。
自律神経が乱れる『冷房バテ』
人の体は「暑熱順化」といって、徐々に暑さに慣れていくようにできています。ところが、最近は気候の変動もあり、まだ暑さに体が慣れない5月くらいで猛暑日になることも。しかも猛暑ゆえに、電車やお店、オフィスでは、かなり冷房の設定温度が低めになっています。屋内は寒いほどなのに、外に出れば激烈な暑さ。
気温差の大きい屋内と屋外を一日に何度も行き来することで、自律神経が乱れ、内臓の働きが鈍り、疲れがたまりやすくなってしまうのです。また、屋内と屋外の行き来はなくても、冷房の効いた屋内に一日中いるという人も問題。体が冷えきって血行が悪くなり、やはり内臓の働きが落ちたり、肩こりなどを引き起こしがちです。屋内にいるときは、羽織り物や膝掛けなどで冷えすぎないようにすることが大切です。
冷たい食べ物で『食冷えバテ』
キンキンに冷えたビールや、氷たっぷりのジュースにアイス、かき氷など、夏になるとつい手が伸びてしまう冷たい食べ物や飲み物。炎天下では涼が取れ、ホッとするかもしれません。
でも、現代のように冷房漬けの人たちがこうした食べ物ばかり食べていると、胃腸が冷えすぎて機能が低下し、胃もたれや下痢を起こすことにも。暑い夏でも体のためには、冷えた飲食物は避けたほうがベターです。常温の食べ物や温かい汁物などを取り、内臓を冷やさないようにしてください。
夏バテを防ぐ4つのポイント
①薄着すぎるのは禁物
一日のほとんどを過ごすのが冷房の効いた屋内や電車内である場合、体を冷やしすぎている恐れがあります。すぐに羽織れるカーディガン等を常備しましょう。
②夏でもしっかり湯船に浸かる
夏の入浴はシャワーで済ませがちですが、夏もしっかり湯船に浸かることが大切。体は冷房で冷えきっていたりします。
③寝る前は明かりを暗めに
寝る直前まで強い光を浴びていると、自律神経のバランスが崩れてしまいます。寝る一時間前くらいにはパソコンやスマホの作業は終え、部屋の明かりを暗めにしましょう。
④味噌汁はパーフェクトドリンク
味噌汁は、味噌やワカメなどから、汗で流れがちな塩分やミネラルも取れるパーフェクトドリンク。アサリやシジミなど貝類が入ったものなら、肝機能を高めるタウリンも豊富。弱った内臓を元気にしてくれます。
健康教室のお知らせ
木村病院では、地域の皆さまがいつまでも健康で元気に生活できるようにという想いを込めて、健康に関連するテーマで毎月【健康教室】を開催しています。参加は無料・予約制です。お気軽にご参加をお待ちしております。
2024年8月の健康教室
日時:8月22日(木)13時~14時
内容:合っていますか?正しい薬の飲み方について
講師:木村病院 薬剤師
場所:木村病院 3階会議室
参加方法:木村病院1階受付および電話(052-781-1119)にてご予約ください。
認知症カフェのお知らせ
木村病院認知症カフェ【み♡まもるCafe】は、認知症のご本人やご家族が、どなたでも気軽に参加できる憩いの場所です。お茶を飲みながら、いろいろなことを相談できます。皆様のお越しをお待ちしております。
2024年8月の認知症カフェ
日時:8月8日(木)14時~16時
内容:夏を楽しみましょう
場所:木村病院 3階会議室
参加方法:木村病院1階受付および電話(052-781-1119)にてご予約ください。
※参加費200円を頂戴しております。
休診のお知らせ
内科【午前診】
8/13(火)瓜野Dr.
8/20(火)瓜野Dr.
8/23(金)高村Dr.
内科【夕診】
8/2(金)瓜野Dr.
8/16(金)瓜野Dr.
皮膚科
8/13(火)~16(金)西田Dr.
8月の診療体制
以上、2024年8月の院内広報誌【けいめいだよりNo.97】をお届けしました。紙面は木村病院外来1階でも配布しております。